みなし相続財産:生命保険金と死亡退職金
遺産分割の対象になるのは、被相続人の死亡時の相続財産になります。被相続人が契約し保険料を支払っていた生命保険金などや被相続人の死亡退職金は、民法では相続財産に含まれません。死亡退職金は、死亡してから株主総会で決議し退職金規定により受取人に支払われるものですし、死亡生命保険金は、契約で受取人が指定されています(指定のないときは約款などの規定によります)のでその受取人の固有の財産になります。
しかし、相続税法では生命保険金や死亡退職金をみなし相続財産として、相続税の課税の対象含めています。保険料負担者が被相続人であれば、生前保険料を被相続人が支払っているので、その死亡保険金などは実質的に相続財産と変わらない経済効果があるからです。
生命保険の場合、保険料負担者が被相続人で受取人が被相続人以外の個人のときみなし相続財産になります。なお、夫(被相続人)に奥様が保険料負担者で生命保険をかけていて、夫が亡くなったとき奥様が受け取る生命保険金は相続財産でなく所得税の一時所得になります。
生命保険でも、被相続人の傷害や病気に対して支給されるもので被相続人が死亡した後に支給されるものは、死亡したことが原因で受け取るものではないので、被相続人の本来の相続財産として非課税の対象外になり、課税されます。
上記は相続財産として課税されるのですが、たとえば被相続人がなくなっていないときに受けていると、被相続人の所得税の申告(準確定申告)では非課税になります。所得税としては受けとった金額は非課税なのですが、手元にお金が残るのでそれが相続財産になり同じことになります。また所得控除を考えると、受け取った保険金は医療費控除のマイナスになります。
生命保険金には、生命保険金とともに受け取る剰余金、割戻金、全農保険料の払戻金なども含まれます。
被相続人の死亡により支給される退職金(3年以内に確定したもの)も被相続人が死亡してから支給されるものですが、みなし相続財産として課税の対象になります。退職金の金額から500万円×法定相続人の人数までが非課税になりますので、相続人が3人ですと退職金が1,500万円を超えた部分が課税の対象になりますので、退職金が3千万円とか4千万円とかにならなければ、法定相続人がいる場合は課税は大きくならないものと思います。
会社が退職金を支給する場合、就業規則や退職金規定などに基づいて支給しますが、生命保険や社内の積み立て、年金などの一時金、共済契約などいくつかに分かれて支給されることもありますので、退職手当として支給されるものであることの確認が必要になります。
なお、被相続人の死亡後に確定した賞与や支給期の来ていない給与は労働債権として本来の相続財産に該当しますので退職金とはなりません。また会社が被相続人の死亡に伴い相続人に支給した、慶弔金、花輪代、葬祭料などとして相当な金額を支給したときは、相続人は贈与税も所得税も非課税になります。
慶弔金については、退職手当として支給するものを慶弔金として支給すると非課税になるため、相続税法では、業務上の死亡と業務以外の死亡に分け慶弔金の上限をきめています。業務上の死亡であれば普通給与の3年分、業務以外であれば普通給与の半年分が慶弔金として非課税になります。それを超えた部分は退職手当として支給されたものとして課税の対象になります。