税務調査の項目 外注費と給与
ここ3年くらいで、税務調査の時期がかなり早まりました。以前は9月から税務調査が始まり、11月ごろにいったん終わり年を越さないように終了するみたいな感じでしたが、税務調査が7月ごろから行われるようになったようです。
税務署の人事異動は7月10日なので、その人事異動前に調査の日程を決めて、異動があれば新しい人が対応するという感じです。税務調査の時期が2か月くらい早まったようです。予算を早く確保するにはできるだけ早い時期に税務調査をするということなのでしょう。
税務調査でみる箇所は大体同じです。売上げの期ずれ、現金売上げのもれ、消費税の地代・家賃・会費、外注費と給与、経費の資産計上もれなどです。外注費と給与は悩ましい部分です。雇用すると変な人でも解雇できないし、社会保険料の負担増加もあり、社長としては、給与ではなくできるだけ外注で処理したいと考えるようです。
外注費と給与はあいまいな部分でもありますので、きちんと理由を説明できるようにしておくことが必要です。また、書類も業務委託契約書、雇用契約書、請求書などの仕事内容の内訳が分かるものを用意しておくことが必要です。
外注費の基本は、請負であることです。完成引き渡しを約束していることです。完成すればだれがやってもよいというものです。また、完成することに対価を支払いますので、完成しなければ対価を支払いません。または、完成するまでやってもらうというものです。
外注費と給与の区分について、消費税法などに5つの項目の通達が出ていますが、結果、その項目を総合勘案してというよくわからない内容になっています。よって、外注費にするには、できるだけ書類を整備し、請負の約束であることを書面で分かるようにすることが必要です。業務委託契約書があり、請求書があり、その請求書は完成した分の請求であるということがわかればよいと思います。
税務署は、道具はだれが用意するのかとか、何時から何時までやるのかとか、決められた時間以外にやったら残業が出るのかとか、交通費はどちらの負担かとか、どうでもいいではないかという枝葉の部分を聞いて来ることが多いです。
交通費など外注さんが請求するのは当たり前だと思います。確かに、力関係がありその業種ごとに違いが出ることも予想できます。しかし、通信費や交通費、仕入材料などを発注側が負担したとしても、それが外注と給与の判断の決め手になるとは思えないものです。
やはり、基本は完成引き渡し、完成するまでやってもらう。逆に完成すればよい、というものです。3か月間で終わらせてほしいという業務委託の仕事を発注したとします。日当で計算し月ごとに支払いをします。でも、時間管理ではなく3か月分の契約金額を分割して出来高で支払っているというものなら外注費になると思います。
完成しなくても、その時間そこにいれば、給与は発生します。残業になれば25%上乗せでの給与が生じます。請負の場合は完成するまでやらせるし、完成しなければ契約した金額の全額の支払いはしないというものです。また、完成させるのは頼んだ人本人でなくてもよいものです。給与の場合は、雇用契約した本人が出勤して作業をしなければなりません。この辺が違ってくることになります。
税務署とのやりとりは、この辺の事情を考慮しながら自分たちの主張をしていくことになります。
外注費には、源泉所得税を控除する必要がありません。報酬など一部のものは源泉所得税の対象になりますので、例外はあります。また、外注費は消費税の課税仕入れになるので、本則課税のときは消費税を少なくします。
給与を支払うときは源泉所得税、住民税特別徴収、社会保険料、雇用保険料などを控除します。そして、消費税は不課税です。
外注費と給与ではこのような差がありますので、会社の状況に応じ、使い分けたいところだと思います。雇用した方が会社としては利益が出るし、仕事が続くときは安定して受注できます。しかし、途中でやめられる危険もあります。1年くらいでやめられると、ちょうど仕事を教えて覚えたところでやめられてしまうので、会社としては負担だけが残ります。
外注費は利益が大きく取れませんが、必要な時だけ頼むことができます。それに、社会保険の負担がありません。利益が多く出ないのですが、外注の仕事がもしよくなかったとしたら、その仕事を完成させるまで、もしかしたら自分たちで負担しなければならなくなるかもしれません。
給与でも外注でも、それぞれ危険はあります。継続した仕事が安定的に入ってくるか来ないかが最初の判断になると思います。社長はできるだけ危険を回避しながら、継続的に安定した経営をしたいそのために、外注費にするか給与にするかという経営判断をしていくことと思います。
しかし、そこに税務の判断項目と合わないところがあると、後から課税されてしまうこともあります。外注費と給与の区別をする場合は、請負かどうかというところを明確にする必要があります。業務委託契約書、請負内容のわかる請求書などの書類の整備をお願いします。
参考までに税務の判断項目を記載します。
(個人事業者と給与所得者の区分)
1−1−1 事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。