小売太陽光発電事業(法人)をしていますが、事業税の申告方法が変わったのですか?
<お客様>
太陽光発電の売電事業を法人で経営しています。毎年、県税事務所から送られてくる冊子の中に事業税の申告方法が変わるようなことが書いてあったのですが。
<税理士>
その通りです。令和2年4月1日以降に開始する事業年度から、小売売電事業を行う法人におきましては、事業税の申告方法が変更になっています。
<お客様>
どのような変更でしょうか。
<税理士>
これまでは、太陽光発電の小売売電事業を行う法人の事業税につきましては、大手の東京電力や関西電力といった大企業と同じ課税方式が取られていました。電気供給業・ガス供給業・保険業を行う大企業に対しては、収入割といって外形標準課税の方法で事業税が課税されているのです。小売売電事業を行う法人に対しては、これが変更になりました。
<お客様>
なんだか難しそうですが、収入割と外形標準課税って何のことでしょうか。
<税理士>
収入割は簡単に言うと、売上の1%というように、収入金額を課税標準とする課税方式になります。この課税方式を取りますと、たとえ赤字であっても事業税が課税されることになります。
外形標準課税は、聞きなれない言葉ですが、簡単に言うと赤字であっても課税しようとする方式になります。
ちなみに、資本金が1億円を超える法人に対しては、外形標準課税が適用されます。その中で、資本割と言うものもあって、資本金にも事業税が課税されてしまいます。
<お客様>
資本金に税金がかかるのは嫌ですね。当社は資本金が1億円より全然少ないので、この心配はなさそうですが、収入割では売上があるだけで事業税が課税されてしまうのですね。
<税理士>
そうなんです。収入割は、元々は東京電力や関西電力等という大企業に対する課税方式で、一般の中小企業にとっては関係のない話でした。
それが、太陽光発電も電気を供給しているじゃないかと、おそらくは管轄の総務省だと思いますが、太陽光発電を行う中小企業に対しても大企業と同じ課税方式を取ってきたのです。
<お客様>当社のような小規模の太陽光発電を行う中小企業には迷惑な話ですね。
<税理士>
本当にそうです。それをおそらく国側も感じていたのでしょう。
そのため、今回の事業税の改正で、小売売電事業を行う法人の収入割の税率が、従来の1.0%から0.75%へと引き下げられています。
<お客様>
それでは、今回の改正で減税になったのでしょうか。
<税理士>
それがそうともいいきれないのです。
確かに収入割に関しては0.25%の減税になっていますが、それに加えて所得割という事業税も1.85%の税率で課税されるようになってしまったのです。
<お客様>
なんだか「〜割」という言葉がたくさんあって混乱しそうですが、所得割って何でしょうか。
<税理士>
所得割は、所得に対して課税される方式で、原則として黒字の時に課税されます。
<お客様>そうすると、赤字の場合には所得割は課税されないのでしょうか。
<税理士>
その通りです。赤字の場合や、黒字であっても繰越欠損金が黒字の金額よりも大きい場合などは、所得割は課税されません。
<お客様>
当社は赤字が続いているので、所得割は課税されないと考えて良さそうですね。
そうすると、今回の改正で、0.25%減税されると考えても良いでしょうか。
<税理士>
それが単純に0.25%の減税というわけでもないのです。これまでは、事業税の金額に対して30%の税率で特別法人事業税という税金がかかっていたのですが、今回の改正でこの税率が40%に引き上げられているのです。
<お客様>
国も減税なのか増税なのか分からないことをしてきますね。
<税理士>本当ですね。制度を複雑にして、減税なのか増税なのかを分からないようにしていると思います。
<お客様>
減税なら減税、増税なら増税と国はハッキリ言ってほしいですね!インボイス制度もそうですが・・・。
<税理士>その通りだと思います。