A社長:決算書の貸借対照表に役員借入金が計上されていますが、これは何ですか?
税理士:役員借入金は、役員などから会社への貸付金になります。
A社長:会社にお金を貸した覚えはないのですが。
税理士:役員借入金は、会社の経費を社長のポケットマネーで支払った場合などに計上されます。特に、お車など高額な買い物を社長のポケットマネーで支払った場合に、役員借入金が計上されることがあります。
また、本来はあり得ないのですが、役員報酬が未払いである場合に役員の個人資金で役員報酬を支払った場合などに計上されることが多いです。
A社長:なるほど・・・。身に覚えがないわけではないですね。
税理士:また、これはあってはいけないことですが、現金手渡しの売上などの売上計上漏れがあった場合に、役員借入金として計上されることもあります。
A社長:さすがに当社は売上計上漏れはないですが、役員借入金が計上されていて、税務上問題はありますか?
税理士:役員借入金は、税務調査が行われた場合に重点的にチェックされる項目になります。税務署内では、150万円以上の役員借入金が計上されると報告が行われると聞いたことがあります。
A社長:どのようなことがチェックされますか?
税理士:役員借入金が計上されていて重点的にチェックされるのが、売上の計上漏れがないかということです。先ほど申し上げた通り、売上の計上漏れがある場合にも役員借入金が計上されますので、この点は重点的に調べられます。
A社長:仮に売上の計上漏れがあった場合には、どのようなペナルティがあり得ますか?
税理士:売上の計上漏れは、ペナルティが重いです。売上の過少申告による法人税等、消費税の追徴に加えて、役員賞与となれば源泉所得税や損金不算入による法人税等の追徴、さらには仮装・隠ぺいが認められれば重加算税も課税されます。悪質な場合には、脱税として刑法犯になる場合もあります。
A社長:それは怖いですね。当社は売上の計上漏れはないと思いますが、役員借入金は気味が悪いですね。
税理士:役員借入金自体は、計上されていることはよくあり得ることです。売上をごまかしていなければ、そう恐れることはないと思います。
A社長:それでしたら少し安心しました。その他に、役員借入金は税務上問題はないですか?
税理士:役員借入金を放置しておきますと、将来社長さんに万が一のことがあった場合に、相続財産になってしまいます。
A社長:それは困りますね。役員借入金に相続税がかかるということですか?
税理士:一概にそうとも言えません。相続税には基礎控除というものがあり、相続財産総額が3,000万円+600万円×相続人の数の範囲内でしたら、原則として相続税の申告も必要ないですし相続税もかかりません。ただし、役員借入金だけでなく、預金や不動産といった全ての相続財産を含めての話にはなりますが。
A社長:それでしたら、将来に備えて役員借入金は消しておきたいですね。役員借入金を消す方法はありますか?
税理士:役員借入金を消す方法はいくつかあります。次回以降に詳しくご説明いたします。
次回に続く。