1 法人税の税率引き下げ
現行の法人税率は23.9%とされていますが、平成28年4月1日以降に開始する事業年度から0.5%の引き下げにより23.4%となり、平成30年4月1日以降開始する事業年度からさらに0.2%の引き下げが行われ、23.2%となります。
中小企業はすでに減税されていますので実効税率は、22〜35%課税所得が400万円、800万円を境に税率は変わってきます。利益が少ないときは22%くらいなので給与でいえば、所得税10%+住民税10%で20%なので給与所得の課税が10%まで給与を上げるほうが節税になります。この計算は会社にかかる法人税等と給与にかかる所得税・住民税だけの比較で社会保険料は考慮していません。
2 減価償却費の見直し
平成28年度の税制改正で、建物付属設備・構築物が定額法になりました。平成28年4月1日取得分から定率法が使えないことになります。これによって定率法であれば事業共用年度に比較的大きい損金を計上できたのですが、それができなくなったため課税所得は増える傾向になります。不動産業賃貸業などを主としている場合、投資した近辺で所得が多くなることから、税金が出ることになります。キャッシュフローは厳しくなることが予想されます。
3 欠損金の繰越控除
青色欠損金額の繰越控除の期間が平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じる欠損金額は、現行の9年から10年に延長することになりました。地方税の青色欠損金額についても同じ措置が取られることになります。
大企業の改正で平成27年から青色欠損金額の繰越控除の限度額が段階的に引き下げられる改正がありましたが、平成30年に50%まで引き下げることは変更ないのですが、緩やかに引き下げが行われることになりました。80→65→60→55→50%といった感じです。中小企業に適用はありませんので、中小企業の方は従来通り青色欠損金額は100%9年間(10年間)繰り越せます。
4 生産性向上設備投資促進税制の廃止
最新モデルで生産性を向上させる設備・A類型又は投資利益率が一定以上である設備・B類型を取得して事業の用に供した場合一定の要件に該当する場合は、平成26年1月20日〜28年3月31日までに取得した資産については、即時償却又は5%の税額控除のいずれかの適用が受けられました。
平成28年4月1日〜29年3月31日までに取得した資産については、50%(建物・構築物は25%)又は4%の税額控除(建物・構築物は4%)の適用が受けられます。
平成28年税制改正でこの制度の適用期限の延長は行われず上記期間経過後廃止されることになりました。太陽光発電など即時償却ができることで節税効果があった制度でしたが、有効な課税の繰り延べの制度が減ったことになります。
5 交際費の損金不算入制度
交際費の損金不算入制度の特例が、平成30年3月31日までに開始する事業年度まで2年延長されます。
資本金額が1億円以下の中小法人については、交際費のうち飲食費の50%を損金に算入する方法と、年間800万円を定額控除限度額として損金に算入する方法を選択することができます。通常小規模の会社であれば、年間で交際費を800万円使うことはあまりないと思いますので、交際費のうち飲食費の50%を損金算入するより、交際費の800万円までを全額損金にするほうが有利です。
交際費は事業に関係する取引先などへの接待や贈答品などにかかる費用で、事業に直接関係ない飲食費は交際費ではなく個人の支出(給与から支払うもの)になります。
6 雇用促進税制の見直し
雇用促進税制は、青色申告で適用事業年度とその前事業年度に事業主都合の離職者がいないこと、適用を受ける前に事業年度開始2か月以内に雇用促進計画をハローワークに提出するなどの要件があります。
適用を受ける事業年度の2か月以内に計画を立てるのですが、計画はとりあえずのものでも大丈夫です。書式は難しいものではありませんので、採用の計画があるときは提出しておいたほうがよいと思います。
改正前の適用期間は、平成23年4月1日〜平成28年3月31日までの期間で、改正後の適用期間が延長されて平成30年3月31日以前に開始する事業年度となりました。延長された期間での要件は厳しくなり対象地域を限定し、雇用者を正社員としました。以前のものは地域の限定がなく、雇用する場合は雇用保険加入者ということでしたのでパートさんも対象になるものでした。
地域については、東京、埼玉、神奈川、千葉、静岡、愛知、大阪などは対象外になりましたのでかなりの縮小となります。弊社のお客様は東京、埼玉が中心ですので該当がなくなりました。
7 少額減価償却資産の損金算入特例の延長
中小企業者等が、取得価額30万円未満である減価償却資産を平成18年4月1日〜28年3月31日までの間に取得し、事業の用に供した場合は、一定の要件の下に取得価額を損金算入することができるものです。この制度が2年延長され、適用期限が平成30年3月31日までになりました。適用の合計上限額は300万円です。
要件は、青色申告の中小企業者等(従業員1,000人超の法人は除きます)です。損金経理をしたうえで確定申告書に取得価額の明細書などを添付します。
8 高額資産を取得した場合における消費税の中小事業者に対する特例措置の適用関係の見直し
平成28年4月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について、事業者が「高額資産の仕入れ等」を行った場合、3年間免税事業者及び簡易課税制度の選択ができないこととなりました。この「高額資産の仕入れ等」は、一取引で税抜1,000万円以上の棚卸資産又は固定資産を意味します。
これまで、100万円以上の固定資産の取得の場合で消費税の課税を選択した場合などに3年間の本則課税を適用するという制度があったのですが、それを固定資産だけでなく棚卸資産にも拡張するというものです。仕入れた不動産、自己で制作したビルなどを売却するとき、簡易課税でおこなうことで消費税の仕入税額控除を仕入れたときと簡易課税で売却するときの2回行えるところから規制の対象になっています。あまり該当することはないと思いますが、該当すると金額が大きいので注意が必要です。
9 非課税所得の見直し
平成28年1月1日以降に受ける通勤手当の非課税限度額が月額15万円(旧10万円)に引き上げられます。消費税率が増加したことや新幹線通勤に係る通勤の実態から改正が行われたようです。所得税は非課税限度額を超えた部分は給与として課税されます。社会保険は通勤手当が全部社会保険料算出の基礎になります。
10 国民健康保険税の課税限度額の引上
平成28年以後の国民健康保険税からの適用になります。全体では4万円(年間)の引上げになります。社会保険の方には関係ないのですが、現在も会社であっても国民健康保険に加入している人がいますのでこの項目も取り上げさせていただきます。
11 クレジットカード納付制度
平成29年1月4日から適用になります。国税の納付をクレジットカードでできるようにするものです。現在もペイジーなどで電子納税ができますが、さらにクレジットカードでパソコンからバンキングを利用している画面に入り国税が支払えるようになるというものです。
コンビニでの支払いができるようになったことで、税金の納付は便利になりましたが、クレジットカードでできるとさらに便利になると思います。しかし国税だけとありますので、その後地方税がどこまで対応するかはわかりません。
12 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例
これまで、居住用財産(マイホーム)を売却したときに、一定要件のもとで3,000万円の特別控除が認められてきました。しかし、相続した空き家を売却したときには、この3,000万円の特別控除は認められていませんでした。
今回、平成28年度の税制改正大綱で「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が新設され、平成28年4月1日から、相続した空き家を売却したときにも3,000万円の特別控除が適用されることとなりました。(適用期間は平成28年4月1日から平成31年12月31日まで)
納税者にとってはたいへんありがたい制度ですが、この特別控除の適用を受ける際には、次のようないくつかの厳しい要件があります。
①昭和56年5月31日以前に建築された一戸建て住宅(マンションは対象外)である。
②相続の時から売却の時まで居住・貸付・事業に使われていない。
③建物を解体して更地にするか、耐震改修して売却している。
この他にもいくつかの要件があり、この特別控除を適用する場合には十分注意する必要があります。